みぞれ小屋@よろづ

徒然に綴ります。主に本と自作品と株について。

映画「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」を観てきました

布団から出るのもつらくなってきました、みぞれです(´・ω・`)

毎年毎年、この季節はつらすぎて萎えます。。。

 

さて、そんな寒さの中、友人よりおすすめ映画の情報をいただきました。

gaga.ne.jp

 

KUBO/クボ 二本の弦の秘密」という映画です。

予告で観た記憶もなければ、噂やツイートで流れていたのを見たこともない。

はて、どんな映画なのかと訊ねてみたところ、

「和風ストップモーション・アニメ

だというではありませんか。

 

……(´・ω・`)

 

実は私、あんまりストップモーションアニメってあんまり好きではなかったり。

どうにも不気味な印象(失礼!)が拭えず……。

だって顔とか不気味だもんよ(´・ω・`)

 

しかしHPを覗くと、ストーリーに「三味線」の三文字が。

ーーあれ?

サブタイトルには二本の弦の秘密、と書いてある。

二本の弦の秘密、そう書いてある。

弦が二本なら「三味線」ではなく「二胡」なのでは?

これで一気に興味が出ました。

公式HPのあらすじを最後まで読んで、いよいよ映画館へと足を運ぶ決意が固まり、さっそく向かうことに。

 

で、館内に入ると、衝撃の光景が。

人少なっ!!( ゚д゚)

私を含めて四人ほどしかいない!!!

 

馬鹿な……もしかして嵌められたのか?(´・ω・`)

そんな嫌な予感を胸に抱きつつ、上映開始。

 

ーー五分後。

杞憂だった(`・ω・´)b

 

「まばたきすらしてはならぬ!」

この文句とともに遭難シーンから始まるのですが、これがもう圧巻でして。

こんな凄いものがストップモーションアニメなのか!?という感じでした。

もはやフルCG映画だと言っても疑われないレベルだと思います。

この部分だけでも見る価値があると断言できます(実際、メイキングを見ると衝撃的ですw)

しかし、この映画の見所は設定とストーリーだと個人的には思いました。

結局最後まで「クボ」という主人公の名前に関しては考察が行き届きませんでしたが、他の部分に関してはちょこちょこと思い至ったことがありますので、カキカキしていきます。

以下、ネタバレ要素をかなり含みますので、大丈夫な方のみお読み下さい。

 

 

 

 

まず、冒頭のシーン。

クボと母がともに暮らす、尖塔とも言うべき岩屋。

眼下にはちょっとした街が広がっている。

これって天岩戸伝説がモチーフになってるんじゃ?と思いました。

隠れてしまえば安全地帯となる岩屋、笑い声の絶えない、お祭もある街。

神話をなぞっているようで印象的でした。

 

続いて、三味線を使って紙を操る能力。

この主人公は「紙芝居」をするのですが、文字通り「紙を使って芝居をする」のです。

「紙に絵を描いて読み聞かせる」のではなく、「三味線を使って紙を操り、息を吹き込まれた折り紙たちがクボの語りに合わせて芝居を打つ」のです。

もうね、このシーンだけでもぐっとくるわけですよ。

町人たちが大喜びするのもわかる気がします。

今で言ったら3Dホログラムですかね。

しかも「まばたきすらしてはならぬ!」からはじまる力強いストーリー。

是非絵本でも出して欲しいですw

 

お次はお母さん。

薄暗い岩屋の中で、静かに心壊れていく様が切なかった。

きっと夫を亡くし、見えぬ敵から追われて心がすり減ってしまったんだな……と感じ入っておりました。

が、見終わった現在、それは違うのではないかと考え直しました。

映画を見た方ならおわかりでしょうが、猿のお守り=お母さんです。

木像はモノなので、それに命を吹き込んだがためにお母さん本人もモノになりかけていたんじゃないか、と。

もしかしたらお父さん同様、記憶を奪われていた可能性もありますが(一度しか見ていないのでここらへん曖昧)、少なくともモノとリンクした代償があったのではないかなーと、勝手に妄想。

クボの危機時にはしっかりと対応していたのも、木像との心の綱引きに勝ったからではないでしょうか。

そして死してからは時間との闘いで、あれだけ頑強にならざるを得なかったのじゃないかと妄想。

お守り人形が猿だったのも、いつか去ってしまうというメッセージが込められていたんではないでしょうか。

どうも妄想の達人です(´・ω・`)物書き故、許されい。

 

そしてクワガタ。

クボの着物の背に入っていた、クワガタ紋がここで繋がった。

だがしかし。だがしかしである。

なぜにクワガタ?

カブトムシならわかる。

兜の虫、だからカブトムシ。三種の武具のひとつでもあるし。

父上も武士だったのであろう? ならばカブトムシじゃないのか?

こんなところで真顔になったのはおそらく私だけだと思いますが、どうにも気になってしまって、一度映画の世界からはじかれてしまいました(クワガタ=父上という推論が当たっていたことには満足)

 

闇の姉妹は、とにかく憎悪と戦闘シーンが印象的。

先に「ストップモーションアニメは人物造形が不気味だから好きじゃない」と述べさせていただきましたが、この姉妹はそれが最大限に発揮されていたと思います。

特に仮面が割れ、下から覗く口元にはぞくりとするものがありました。

人形を映しているのでしょうが、こんなにも深みを与えられるのかと驚愕したほどです。

私は吹き替え版で鑑賞したのですが、声の迫力もあって、まさしく「闇」を体現するキャラに相応しい。手持ち武具が鎖鎌なのも、死に神っぽくてGOOD。

戦闘シーンはCGアニメばりに凄い。

ぐるぐる動くし、間の使い方も素晴らしくて、本当そこいらのアニメよりもよほど「必死に戦っている感じ」が出ていたと思います。

間違いなくこの映画の醍醐味のひとつでしょう。

 

サギの群れが空を渡っていくシーンも感動的です。

灯籠から出でて炎のサギ(たぶん)となって羽ばたいていくシーンでは目頭が熱くなりました。

劇中、初めてサギが出てきたときは、「ああ、冒頭で出てきた「火を吐く鳥」っていうのはサギのことだったのか」と膝打ち。

サギは「口から火を吐く」という伝説があるためです。卵も産みますしね。

また「五位の火」と呼ばれていたり、吾妻鏡では怪光として描かれていたりしていて、火鳥として有名です。

しかし日本に住んでいても知らない人も多いと思うので、ただただ制作陣の方々凄い!と心震えました。

 

ラスボス・月の帝に関しては、もうちょっと掘り下げて描いてあげてもよかったんじゃないかなあ、と。

それだけ映えるキャラだったはずなのに……ただただ悲しいだけのおじいちゃんとしか見られませんで(´・ω・`)

月の帝を称しているので、羽衣とかかぐや姫に繋がる何かがあるのかなーと観ていましたが、そういうものはなく。

でも象徴的な要素があって。

ラスボスらしく変身するんですけど、それが鯉のような化け物なんですよね。歯が生えていたので龍かもしれませんが。雨風を降らせていなかったので鯉だと私は思っております。(ただし、化け物には鱗はあれどヒゲがありませんので全然違う可能性も)

何にせよ、鯉龍変幻信仰がもとになっているのかな?と考えました。

鯉は何でも食べてしまう雑食性を具えた大食漢です。

月との関わりは浅学故わかりませんが、「欲望の権化」としてはとても相応しい設定ではないかと。

 

最後になりますが、この映画にはたくさんの「かみ」があるのだと見解きました。

冒頭から出てくる「紙」は紙芝居にも、行き先を示してくれるハンゾウにも、魂を送るための灯籠にも使われています。

「髪」は言わずもがな、お母さんの命であり最後の決め手にもなっています。(また髪には災いを取り除くという意味も)

「神」は月の帝だけでなく、「音」という目には見えないけれど霊威を生じさせるものとして当てはまりますし、「霊魂」という意味も含んでいます。まさしく魂送りにも当てはまります。

また「守」も「かみ」と読みます。

これはこじつけに近いかもしれませんが、KUBOという映画は、人はもちろんのこと、万象様々な「物語」を「守る」お話だと思うのです。幾度も「物語」という言葉を使っていたのはその表れではないかと。

三味線より先に使われていた楽器・琵琶には、琵琶法師という者がいて、琵琶を弾きながら節をつけて説話を語っていました。三味線は琵琶の後出ですが、本質は同じで、弾き語りです。クボに三味線を持たせたのは、こういった意図があったものと推測します。

人は死んでしまいますが、物語として、歌として残してもらえたら皆々にずっと忘れられずにいてもらえる。いつまでも人格を守ってもらえる。

物語さえあれば、記憶を失った人にだって生きる力を与えられる。

寿命より守るべきは想い出。

 

というわけで、たくさんの「かみ」に想いを込めて作られた作品だったなあ、というのが私の率直な感想です。(短っ

ほとんど妄想ですが、自分なりに解釈できて満足。

大変な傑作だと思います。今年観た映画の中でも、五本指に入るくらいには。

 

とりとめもなく思ったことを綴りましたが、最後の最後に一言。

制作陣の方々、これだけの大作(文字通り)の制作、本当にお疲れ様でした。

素敵な一時を本当にありがとう。

またいつかスクリーン越しに逢えることを祈念しております。

 

しーゆーノシ